くちゃくちゃ

敗走。

 

昨日の話。

底引き漁の初日からやらかしてしまった。

 

ワイヤーローラー

 

200mのワイヤーを巻き取っていったこのローラー。

しっかり負荷をかけて、ギッチリキツキツに巻いたつもりだったのに

「なんか緩いな・・・」と思ったのが運の尽き。

 

(緩いとワイヤーの山が崩れて

上っ面のワイヤーが下の方に埋もれてしまう事がある。

そうなると「敷いてしまった」状況になって

ワイヤーをやろうと思ってもそこで止まって出なくなってしまう。

ハンマーなどでワイヤーをブッ叩いて直してやる重労働が発生する。

おまけに敷かれたワイヤーに変なクセがついてそこから切れやすくなったりする。)

 

1番上げるついでにワイヤー全部出して、もう1回キッチリ巻きなおすか。

 

ワイヤーをダーッと出す自分。

 

船速落として

ローラー残ワイヤー3回転くらいでブレーキかけてー

 

・・・

 

かからねえッ!!?!?1?

 

バツン!とものすごい音を立ててぶっ飛んでいく

ワイヤークリップという名の歯止め。

 

無情にも自分の横を通り過ぎていくワイヤーのケツ。

船速はゼロだし、止めれるはず!と思ってさっと掴んでみるも

グリスまみれでヌルヌル&先に海に沈んだ200m弱のワイヤーの自重で

とても人間1人の力じゃ抑える事ができず・・・

ズルっと手の中をすり抜けていった。

 

ボチャンと無情な音を立てて海の中に消えていくワイヤーのケツ。

 

茫然自失。

 

悪い意味でワン&オンリーの底引き道具を、ワイヤーごと、又綱ごと、

操業開始から30分で全て海に落としてしまった。

 

周りには他の漁師もいる。

とりあえず連絡網経由で経緯を説明して

ここらへんを漕がないようにしてもらわないと大変な迷惑がかかってしまう。

(相手の道具に自分の道具がかかった拍子に相手の道具を損壊してしまう恐れ

&操業時間は決まっているのに時間を無駄にさせてしまう可能性がある。)

 

連絡は済んだ。

 

さて。

どうするか。

 

一応、袋はついていないけれど、港には予備の小型の爪がある。

それを去年のサビサビカチカチワイヤーで曳いて、なんとか引っかけるしかないな・・・

 

という考えにいたったところで

同じイワシ網で働く先輩漁師から連絡がくる。

「サデ貸しますよ。」と。

 

この時初めて知ったんだけれどサデとは

返しのついていない錨のようなもので、

海中に落ちた道具をひっかけて上げる用のアイテムらしい。

 

サデ

 

ああー なるほど。

激重チェーンのおかげで海底を引き摺る事が可能になるワケかー

 

ああー なるほど。

この辺の人(漁師)が「その辺に放っておけ。」という意味で

「サデ投げとけ。」と言うけれど、サデってこのサデの事か!

 

いかんいかん、変なとこで納得してないで

はやく道具を探して上げないと。

 

航跡はつけていたし、すぐに見つかるだろう。

200mのワイヤーのどこかに引っかければ上げられるはず。

そこから端を辿って、ローラーに巻きなおして、再スタートだ!

 

水深25mの海域で50mの錨綱の先っちょにサデをつけて低速、

1.5ノットくらいで曳きまわす。

 

フフ。

2、3回もやればかかるだろう。

 

と思ってたんだけれど。

 

あれ・・・

 

全然かからない。

航跡を何度も横切ったり。

ジグザグに通ってみたり。

落とした時と同じようにたどってみたり。

逆を行ってみたり。

色々やってみるも全然かからない。

 

すぐに見つかるかと思ったのに・・・ これは難航するかもしれん。

そういえば聞いた事があるぞ。

 

ワイヤーを切らして落とした爪を探すのに

数人がかりでも10日かかったという逸話を・・・。

 

やべーやべーぞ。今年が終わっちまうぞ。そんな時間がかかってたら。

よく考えろ!よく考えろ!

たぶん、ワイヤーは200mあるとはいえど、

巻き癖のついたワイヤーだもの。短距離で丸まっている可能性がある。

 

こうなったら爪、そのものを探すんだ。

魚探で当てて、サデを引っかけてやる!

と思い立って探し回ってみるもなかなか見つからない。

 

そうだよな。

船の後ろをついてきてるとはいえ、

完全に航跡の上にあるとは限らないもんな。ズレている可能性がある。

 

そうこうしているうちに時刻は14:30に。

日没までやってはみるつもりだけれど

こりゃー 明日も赤字上等の宝探しだな。

と悟り始めた頃、サデを貸してくれた先輩漁師が

「残り30分でダメ元でそこを曳いてみる。」

と助け船を出してくれた。

 

でも、もしそれで自分の爪が引っ掛かったとしても

それで相手の道具が壊れたとしたら・・・

もうそれこそ自分は腹を切るか指を詰めるかしかなくなる。

 

申し出はありがたいけれど、「もしも」があったら大変だから

無理はしないでくれと伝えるも

面白がって「とてもクサい場所」を曳き始める先輩。

 

んで、見事1撃で曳き当ててもらって

なんとか自分の船に上げた図がさっきのこれ。

 

いやー 奇跡的に自分の道具も相手も道具もノーダメージで済んだけれど

道具同士が絡まっちゃって、この状態にするのに1時間もかかってしまった。

 

操業時間も過ぎてたから良かったけれど、迷惑をかけたのは事実。

今度ビール1ケースと現金包んで御礼にいこう。

 

出荷しに港に戻る先輩を見送った後、

四苦八苦しながらワイヤーを上げようとしてみるものの、

ガチで人力では上げられないほどに重い。

 

200m巻いてある状態では持ち上げられる事ができるのに

海中に落ちたらこんなに重いのか。その事実に震えながらも

爪側ワイヤーの末端のO字になっているところにロープを括り付け延長し、

なんとかローラーに巻き付け直す事に成功。

 

(O字と書いたが、コース、またはシンブルと呼ばれる金具がついている。)

 

ただし、O字になっているところは片方だけなので

正直言うとワイヤーは後ろ前になっている状態。

加工して自分でコースを入れれば話は別だが、生憎1そんなものは持っていない。

 

再び操業するには、

ワイヤーの前後を入れ替えて巻きなおして、

爪と袋の点検をして、爪の前後も逆にしないといけない。

 

うーん。

 

明日(12日)は時化る予報だし、

思い切って休んで1日かけて道具を直すかなあ。

でも火曜日(13日)も底引き漁は休漁日だしなあ。

 

・・・

気が付いたら23時の真夜中、(満潮になる時刻)

波止場でワイヤーを巻きなおしたり

フォークリフトを乗り回して爪の前後を入れ替えている自分がいた。

 

コロナのせいで今月はまだろくに働けていないという事実。

自分のマヌケのせいで(ブレーキ機構のナットが緩んでいた。)

1日ふいにしたという事実が許せない気持ち。

そして意地が自分を動かしていた。

 

で。今日。

 

家を出る前から風の音で

超時化ていたのが分かってた

& 寝不足が祟ってか咳が止まらず苦しいコンディションの中

前日の夜なべを無駄にしたくなくて決意の出漁。

 

この日、浮島からは自分を入れて出漁者はたったの4人。

うち1人はあまりの時化に昼前に撤退。

 

自分もあまりの時化に不便を感じたものの

コロナ後遺症のブレインフォグが良い作用をしたのか

恐怖感を全く覚えなかったので時間一杯まで操業完了。

 

3匹ともメス。ラッキー。

 

結果は赤貝13Kg。

魚はコチがまあまあ獲れて、

座布団クラスのヒラメが1匹と、メスのワタリガニが3匹。

 

赤貝は揮わなかったけれど、魚の内容は良かったな。

単価がどれだけ安くても3万はいきそうだ。

 

しかし時化てる時、赤貝が獲れないのは去年から続く個人的な課題点だな。

今年は勝手も分かってきたし、試行錯誤して改善していきたいところ。

 

ふぃー 先輩のおかげで助かったけれど、大変な2日間だったな。