何十年に１度の強さの台風だからって！

まだ暴風域に差し掛かるかどうかのところなのに、そんな事ってある！？

左右の船の間に３本ずつ、堤防自体に２本、計８本もロープを取っておいて、

私の船だけ流されるだなんて、

そんな事ってある！？

ありえない。

８本全てが偶然切れるだなんて事、ありえない。

それで私の船だけ流されるだなんて・・・

まさか・・・　人為的な悪意・・・？

ありえない・・・　事もない。

が、しかし。

そんな事ありえるのか・・・？

ロープの取り方がヘタクソだったとか？

まさか？この期に及んで？

飛び起きてそうこう逡巡している間に

親方から電話がかかってくる。

「200%拓ちゃんの船じゃけえ！！！」

マジかマジかマジかマジか！！

マジかーーーーーーッッッッ！！！？？？？

200%って！！

マジで私の船なのかーーーー！！！

このままでは自船が風と波に煽れて他の船にぶつかってしまうかもしれない。

そうなれば自分の船はもちろん、他の先輩方の船にダメ―ジを及ぼしてしまう。

それどころか、波止の中にいただけラッキーであって、

もし沖に流されたら・・・・！

重大な事故になる！

それこそ、TVで流されるような重大な事故に繋がる恐れがあるッッ！

急げ、現場に急げ！

すでに雨風が吹き荒れてはいるが、

とにかく、なんとかして被害がでないうちに

船を安全地帯に戻さなくては！

だとしても！

できるのか！この強風の中！

もう気が気じゃない。

・・・

他人の船やんけ！！！！！

流されてるの、他人の船やんけ！！！

ちょっと親方ーーーーー！！！！？

200%って言ったやんけーーーー！！

連絡を受けてブルースリーかってくらいの勢いで飛び起きたし、

間違いなく寿命が縮んだぞ！

結果的に言うと

漁師をやめて、波止の桟橋に船を止めっぱなしにしている人の船が

波止場の真ん中あたりにまで流されていた。

よくよく見ればロープをとっていただろう船の舳先（ミヨシ）がモゲて桟橋そばに浮いている。

レールが、木製部分が腐っているとこういう事もあるんだな。

明日は我が身、だ。

まあ、それはともかく、私の船が流されていると思って

集ってくれていたイワシ網の親方と若い衆と私とで（誤報だったが本当にありがたい事だ。）

流されていた船をもやい直してとりあえずトラブル解決。

目だった被害もないうちに片付いて良かった良かった。

そんで親方の家でお疲れ様でした飲み＠朝7時。

親方「いやーすまんねすまんね！絶対拓ちゃんの船だと思ったわ！ガハハ！」

私「ありえないですよ！船並べて底引きだってしてたでしょう！？

流されていた船、底引きの装備も一本釣りの竿もついてませんよ！？

第一、あなたの息子さんと同じ型でしょうが！

流されていた船とは何をとっても違いますよ！何をどうしたら間違えるんですか！？」

親方「ガハハ！すまんねすまんね！」

笑い話で済んで良かった空前絶後の台風上陸前のヒトコマ。