はい。

昨日書きたかった事を書きます。

 

それは「未利用魚」の事。

 

「未利用魚」とはその名の通り利用されない魚で

漁獲されたのはいいけれど―

 

①魚価(味や需要の問題で)が低くて市場に出荷すると赤字になる

②数が少な過ぎて市場に出荷すると赤字になる

(そういえば今まで「出荷」について詳しい事を書いていなかったと思うので

なぜ赤字になるのか等を後日書いてみます。

明日はイワシ網の会議飲み会があるのでダメ!ふはは。)

 

などなどの問題から捨てられたり、漁師が食べたりして

市場に出回らない魚の事を言います。

まあ、要するにお金にならない魚の事。

 

そういった未利用魚について―

特に捨てられる未利用魚について

サタケは最近真剣に頭を悩ませています。

 

いや、着地点を探していると言った方がいいのかも。

この文章を書き始めた段階で、自分でも何をどうしたいのか。

まだよく分かっていない。

 

最近、お師匠にくっついて今日の日記の一番上に載せたような

売れる魚も、売れない魚(未利用魚)も

構わずごっそり獲ってしまう網仕事に従事しているんだけれど・・・

 

なんと言ったらいいのか。

 

漁師になろうという人間が何を言っているのかって感じだけれど

捨てられる魚に同情し過ぎて困っている。

それも恥ずかしい話、涙が零れ落ちそうになるレベルで。

(年齢を重ねて涙腺あたりのパッキンが弱くなってるせいかも

知れないけれど。)

 

いや、生きてるまま海に返される、捨てられるのなら別にどうとも思わないよ。

でも、多くの場合、お師匠に限らず、どの漁師も、網仕事に従事している以上、

殺して、食べたり消費もせずに海に捨てている魚がいるはずなのだ。

 

※断っておきますが、決してお師匠批判の文章じゃあありません!

 

この写真。

これは小型の刺し網の写真。

このタイプの、死んだ状態で出荷する魚(言い方悪いな!)を獲る網は、

写真のように生きた魚が付いた状態のまま船上に繰り上げ

帰港してから魚を網から外し、市場に売る魚とそうじゃあない魚とを

選り分けるというのが仕事の流れなんだけれど―

 

当然長い間海中から引き揚げられているワケだから

ほぼどんな魚も、市場に売れる魚も未利用魚も、

一部の生命力が強い魚種以外のものは、網から外す頃には一様に死んでいる。

 

市場に出荷できる魚はともかく、

未利用魚の中には自分たちで食べるヤツもいるけれど・・・

当然、そのまま死んだ状態で海に捨てられてしまうヤツらもいる。

(フグみたいに毒があったり、骨だらけで食べ難いとかの理由で・・・)

 

命だけ奪って、そのまま捨ててしまう魚が居るのだ。

栄養として海に還るだけマシなのかもしれないが、

命を無駄に奪っている事には変わりがない。

 

流し刺し網の類の網なんてもっと酷い。

鰆や鯛なんかの色々な意味でデカい魚を狙ってやる大型の網仕事で、

これは前述の小型刺し網とは違い、魚が上がってくるその都度、

網を巻きあげるローラーを止めて魚を外していくタイプの仕事だ。

 

雑魚としてホシザメが結構獲れるんだけれど、

これを生きたまま捨てたらまた(海中にある)網にかかって、

船に上がって来るから邪魔という理由で船の甲板に打ち捨て、

死んでから海に返したりする。

 

(ここだけの話、『シンドラーのリスト』的に生きたままこっそり

お師匠の目を盗んで海に戻したりしている・・・。

ホシザメは胎生でお腹の中で子供を育てるタイプの魚。

この時期はお腹の中で子供を育てている。

そんな魚が死ぬまで甲板で苦しみ、のたうち回わっているのを放置するなんて

自分にはできない。心を殺さないと無理だ。でもそれって、

心を殺した人間って、真の意味で生きているって言えるのだろうか。

俺はNOだと思う。そしてそれは前職を辞した理由でもある。)

 

偽善、だと思う。

漁師という、命を奪う仕事に就く事を自分で選んでおいてなんだけれど。

 

人間の物差しで魚に勝手に値段をつけて、生きるか死ぬかを、海に戻すか、

出荷するか、食べるか、殺して捨てるかを選ぶ仕事に就くことを

選んでおいてなんだけれど。

 

それでも、俺は自分の命も(人生的な意味でも)、

自然の命も無駄にはしたくない。

 

全ての命には意味があるはずだ。

邪魔だなんて理由で、海からの恵みを無碍にしてもいいものだろうか。

奪う以外にも、漁師が海にしてやれる事だってあるはずだ。

 

しかし、だからと言って今のサタケに何ができるワケでもない。

 

捨てられる魚が上がってくるたびにその都度、トリアージの如く

網から外して海に返してやるか?

否、そんな事をしている時間はない。

 

ではせめて自分で食べてやるか?

否、食べられる許容量を超えている。

冷凍庫もすでにいっぱいだ。

 

加工して売る?このサイトで売る?

これはひとつの答えに成りうるけれど、

サタケはまだ正規の漁協の組合員ではないし、マンパワーも足りていない。

 

今は、研修期間中は心を殺して耐え忍ぼう。

 

そしてせめて、奪った命の責任を取れるようになるまでは

独立しても網仕事はしないようにしよう。

(網仕事は一人で出来る気がしない。小型刺し網でリリースが

推奨されている15cm以下の鯛が獲れてしまう=殺してしまうのも

納得がいっていない。)

 

俺は蚊もゴキブリも躊躇なく殺す人間だけれど

せめて海には、海とは共存していきたいから、

ただ奪うだけではなく、何かを与え、共存している漁師になってやろう。

 

こんな漁師が、漁師らしからぬ漁師が1人くらい

この世の中にいてもいいはずだ。いいはずだろう?

生まれついての漁師じゃないから、他の漁師とは違う視点を

持っていたっていいはずだ。

 

うん。

 

書いているうちに答えは出た。

 

このサイトも、人脈も、使えるものはすべて使って、

自分で奪った命の責任くらいは取れる漁師になろう。

 

ライフワークってやつになりそうだ。

人生の目的が、ゴールが34歳にして、ようやく見つかった。

 

心が燃えてきた。

絶対にやってやるぞ。